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はじめに

よく「実務と試験勉強は違うから、日商簿記で勉強したことは実務の現場ではなかなか使えないよ」という話を聞きます。

でもそれは本当でしょうか?

これについてはいろいろな意見があるところです。

今日は実務の現場で年齢的には中堅になりつつある私「最速簿記」のスタッフが私見を述べたいと思います。

試験勉強と実務で全く違う点もあります

まず全く違う点から述べたいと思います。

試験勉強では重要でも実務では全く使わない仕訳や勘定科目というものがチラホラあります。

例えば、「引出金」という勘定科目でしょうか。

日商簿記3級では資本金の評価勘定として「引出金」という勘定科目を使用します。

例えば、次のような事例です。

水道光熱費1,000 円を現金で支払った。なお、このうち300 円については店主の個人的な負担分であった。

【仕訳】
水道光熱費700円/現金1,000
引出金  300円/

決算において上記の引出金勘定を資本金に振替えた。

【仕訳】
資本金300/引出金300

日商簿記の本試験ではたびたび出題されるためお馴染みの「引出金」ですが、実務の現場では実は使用されません。

そもそも個人事業主なら「事業主借」や「事業主貸」という勘定科目で直接処理されますし、企業なら「資本金」という勘定で処理するはずです。

評価勘定なんていう回りくどい勘定科目は使用しないわけです。

こういった実務では使用しない勘定科目の仕訳問題等が簿記試験には出題されたりします。

次に伝票会計のお話をしましょう。

日商簿記の試験で、3伝票制や5伝票制を勉強しました。

そこの中で一部現金取引という論点がありました。

例えば次のような事例です。

商品500 円を売上げ、代金のうち200 円は現金で受取り、残額は掛けとした。

この事例を簿記学習上表すためには①取引を分割する方法と②全額を掛けで取引したと仮定し、現金取引部分はすぐに代金を決済したとする方法の2つの方法を勉強しました。

この事例についても実務の現場ではこんな難しい方法を取らず、パソコンの仕訳欄に仕訳を入力すれば終わりです。

では本当に試験勉強をしても実務の現場では使えないのか?

上記事例のように勘定科目や処理の仕方などからすれば簿記の試験勉強と実務の現場では大きな差があり、試験勉強をしただけですぐに実務ができるかと言われると疑問が残ります。

簿記検定に合格し、晴れて実務の現場にやってきた人は自分は簿記ができるぞという意識と実際になにが行われているか分からないという期待ギャップを経験します。

当然まわりも今まで簿記の勉強をしてきたのだからある程度のことは分かるだろうと思い、そこでも期待ギャップが生まれてしまいます。

そのため簿記の試験勉強をしても実務には応用できないので使えないという結論になってしまうかもしれません…

しかし、実務で使わない勘定科目はそんなに多くないのですぐに慣れてしまいますし、システムも仕様書を読めば誰でも理解できてしまいます。

短期的に見たら、勉強で蓄えた知識はすぐには使えないかもしれません。

ただ、少し実務に慣れてくると試験勉強をした人としていない人で圧倒的に処理能力が変わってきます。

試験勉強をした人はなぜその仕訳をするのかについての理論を知っています。

試験勉強をしていない人は定型的な処理には慣れるものの、仕訳の深い意味を知らないためなにかあると対応できなくなります。

この差はあとになればなるほど広がってきます。

ご自身の業務の部分的な知識が増えても全体を仕訳の流れを把握する力がなければそのうち大きな壁にぶつかります。

会社の中で重要な役割を担うためにも簿記の試験勉強の知識は現場実務で使える使えないではなく、現場実務で必須になると考えるべきでしょう。